ナヴィ・ムンバイの病院(1) Fortisは悪くない

ムンバイの病院に初めて入院した。胃腸炎である。私は生まれつき胃腸が弱いうえに神経が弱いので、疲れやストレスで胃腸がストを起こしてぶったおれることがよくある。ムンバイではわりとスローに暮らしていたのでこれまでやらずに済んでいたのだが、ここんんところの激務でドカンときちゃったようである。というわけで、3泊4日でナビ・ムンバイのVashiにあるFortisグループのヒラナンダニ・ホスピタル(Hiranandani Hospotal)に滞在した。

バックパックに予想4日分の下着とタオルと洗面用具と本を詰め込んで、Fortisの救急病棟に駆け込んだ。衰弱しているのですぐに点滴を打たれて、そこからベッドのまま病棟に直行。8人の大部屋を選ぶと、デポジットが1万ルピー(2万円)。滞在期間によってそこから入院費用を引いていって、差額が残れば返金、足りなければ退院時に払うシステムである。払う金がない人にはそのそも入院できないようになっているわけだ。もちろんカードで切ってくれる。

Fortisは1年ほど前にできたインターナショナル・チェーンの大病院である。設備や清潔感は日本の新しい総合病院とほとんど同じだ。お医者さんは英語が流暢で、看護婦さんは片言である。そのほかに掃除とお世話のスタッフがいる。どこの病院でも同じことだが、看護婦さんのほとんどは南のケララ州の出身である。インドは医療技術で有名だというが、私にはこの病院の処置が日本より上なのか下なのか知る由はない。ただ日本と明らかに違うところは、抗生物質を大量に使う傾向と、どんな症状でもまずマラリアを疑うというセオリーである。

今回私がFortisに駆け込んだ最大の理由は、Fortisでは病院食が出ることである。前にも書いたけれど、インドの社会システムというのは徹底的に家族単位でデザインされているので、入院してもご飯が出てこないのだ。たとえば、うちから徒歩5分のところにVashiで2番目に大きいMGMホスピタルという総合病院がある。同僚はこの病院で出産したのだが、ご飯が全く出ないので、自宅で母親がお弁当を作り、夫が毎食3回分運んでいたらしい。

実際、ご飯どころか薬も出してくれない。医者が回診に来て必要な点滴をリストアップすると、その紙を患者に渡して「下の薬局でこの点滴と注射針と管を買ってきなさい、そしたら看護婦が打ってあげるから」と言う。家族がいない場合、お手伝いスタッフをつかまえてお金を渡し¥、「この薬と、売店でサンドイッチを買ってきて」と頼まなければならない。病気の時にこれはきつすぎる。

それを考えるとFortisは天国である。まず朝の5時にクラッカーとチャイが出てくる(この時間に病人を起こすのはやめてほしいんだけど、インドでは早朝に軽食とお茶を食べるのが健康にいいとされている)。8時半に朝食。サンドイッチとヨーグルトとフルーツ。お昼ごはんのちょっと前にジュース。1時に昼食。インド風のおかゆかカレーとチャパティ。4時におやつのクラッカーとチャイまたはジュース。夜8時に夕食のカレーとチャパティ、そして9時半にホットミルクかココアが出る。味もやさしくておいしい。

早朝に毎日ベッドシーツを代えて、新しいパジャマをくれる。頼めば真っ白なタオルも出してくれる。誰も深夜に病院のフロアの上で包帯を巻いていたりしない(MGMでは深夜にお手伝いのおばさんたちが病院の廊下に洗った長い包帯をビローンと広げて、床の上を滑らせるようにぐるぐる巻いていた。その包帯を傷の上に巻かれるのは結構イヤである。)そんなわけで、今日は実践的な話ですが、ナビ・ムンバイ在住のひとり暮らしの方はFortis、おすすめです。インド、病院、などの検索語でたまたまいらっしゃった方に言うとすれば、とにかくインドの病院はピンきりなので、滞在予定地の近くのよい病院をいちおうチェックしておくといいと思います。ポイントは食事の有無です。

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